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DIG THE NEW BREED モダニズムの行く先に

更新日:2021年10月19日

by:安藤模亜(ペンシルズ) 「"MOD"とは一体何か。」という問題はモッズカルチャーに触れた人なら誰しも多かれ少なかれ考えた事があると思う。

60年代オリジナル原理主義、ネオ以降革新主義など数多くのそれぞれのMOD観なるものが存在する。モッズシーンなるコミュニティ内に大勢の人間がいて、共感しあったり、時にはぶつかる事もあるだろう。 今、この文を書いている間も私はその"MODという呪縛"に取り憑かれている。 2007年、春。ポール・ウェラーに激しく感化されたひとりの大学生(以降、K)が関西のモッズ界隈クラブイベントに足を運ぶようになった頃、M●VIN' ●N THE GR●●VE(※諸事情により一部伏せ字)というバンドの主催によりMODS MAYDAYは京都にて開催されていた。

スマートかつ、時にはアクロバティックに荒れ狂うダンスフロア、鳴り響くMod Classics、洗練されたバンド演奏、そして鮮やかにカスタムされたスクーター達。 アンダーグラウンドだが、限りなくポップな光景。 その全てが彼には新鮮かつ華やかに見えた。 そして当時すでに別の界隈でシンガーソングライターとして活動していたKはこう思うようになる。 「いつかこのステージでライブがしたい。ここにいる奴らを自分の曲で踊らせてみたい。」 そんな野望を抱きながら、彼は財布に中身がある限りはイベントに通い、人見知りで不器用ながらも交流を広めていった。 その中でも"テツくん"と呼ばれていた先輩には可愛がられ、"モッズの遊び方"を教わった。関西中の関連イベント、居酒屋、時にはガールズバー(ぼったくられた)、何処に行くにも一緒だった。 ある日、Kはそのテツくんが主催するモッズイベントで彼のサポートのもと、ライブ出演する事となる。 "New Continental" 60'sのディープな信念は残しつつ、イベント開始前はダンスレッスンが行われ、本番では爆音のR&Bとともにテキーラショットが振る舞われるような、良い意味で"チャラく"明るいモッズパーティーだった。

渾身のステージ。Kはバンドを引き連れソロ名義にて出演。冒頭2曲はサービス的にカバーを披露。ツカミは好調。 「ちょっとウケてる…!?憧れの先輩たちも最前列で踊ってくれてるやん!!」 が、オリジナル曲が始まった途端、空気が変わった。

親しい友人は暖かい目で見つめてくれていたものの、フロアからは人が激減していった。 ぶつけどころのない不満を感じた彼は最後にギターを地面に叩きつけ、フロアの厳しさと大事なギターのネック折れに絶望を覚えつつ、ステージを去った。 「あんなシティポップみたいなオリジナルやるくらいやったら全曲カバーでやったら良かったのに(笑)」 憧れの先輩が言う。Kは苦笑いして過ごしたが、脳内ではそいつの上にのっかって首を絞めていた。


そんな未練を残したまま、関西モッズ2000年代は、ある事件を境に終焉を迎えた。 その後、よりハードコア6T's文化となったシーンに本来の"Modern(近代的)"の意味に対する矛盾を感じ、ネオ以降革新派だったKは共感出来る数少ない仲間と自分たちの"MOD"を自由に追求すべく、シーンを飛び出し、新たなバンド結成と、イベント"DIG THE NEW BREED"(THE JAMのライブ盤タイトルから拝借)を立ち上げる事になるが、 それはまた、別のお話。 安藤模亜(ペンシルズ)

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